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顎機能不全症(顎関節症)

注!顎関節症は顎関節の病気ではありません

恐ろしい「顎関節症」の治療


「口を開けると顎がカクンと鳴る」、「朝起きると顎がだるい」、「口を開けると顎が痛くて大きく開けられない」などは、いわゆる「顎関節症」の疑いがある患者さんの代表的な症状です。

一昔前までは、いわゆる「顎関節症」の主な原因は「悪い噛み合わせ(咬合)」であると思われていました。そのため良い咬合を作るために、歯科医たちは咬合治療と称して、患者さんの歯をいじくり回しました。

たとえば、咬合調整(歯の一部を削って、術者が正しいと思う上下の歯の接触状態を作る)、スプリント療法(噛む面にプラスチック製の枕を入れて、噛み合わせの影響を是正する)、オーラルリハビリテーション(すべての歯を削って被せ物を作り、術者が正しいと思う新しい噛み合わせの関係を作る)、歯列矯正(歯並びを変えて、術者が正しいと思う新しい噛み合わせの関係を作る)などです。

現代の医療水準からすると空恐ろしい出来事のはずですが、もっと恐ろしいことは、現在でもこのような前時代的な治療、というよりは破壊行為を勧める歯科医が少なくないことでしょう。

「顎関節症」は顎の関節の病気?


そこで、みなさんに「顎関節症」という病気の理解を深めるために、ここでは基本的な事柄から説明したいと思います。

はじめに「顎関節症」という病名は、この病気をよく理解している歯科医の間では現在使われていません。理由は、「顎関節症」という病名から連想されることとして、この病気が「顎関節の病気」のように誤解されてしまうからです。

つまり、「顎関節症」とは「顎関節の病気」ではないということです。世界的に見て、専門家の間でコンセンサスが得られている病名は、その病状からTMD(Tempro- Mandibuler Disorders)が一般的で、日本語訳は「顎機能不全症」となります。

TMDの原因は時代と共に変遷を繰り返し、現在では確定されているといってもいいでしょう。その主な原因は「心理的ストレス」です。TMDは胃潰瘍や十二指腸潰瘍や円形脱毛症のような、その発症にストレスが関与していると考えられている疾患の一つです。

ですから、あるとき気がついたら自然に治っていたという例も決して珍しくありません。にもかかわらず、現在でも多くの歯科医が、未だにその原因を「不正咬合」(悪い噛み合わせ)と決めつけて、関係のない歯を触るのです。これは歯科医の勉強不足ということに尽きるのではないでしょうか。

TMDの治療法


TMD(顎機能不全症)の主な原因が「心理的ストレス」ということになると、治療の基本は心理療法が中心となります。TMDのメカニズムを簡単に書くと次のようになります。

「心理的ストレス」→「咀嚼筋の過緊張」→「就寝時の歯軋り(ブラキシズム)」→「筋の疲労・痙攣」→「顎の痛み・開口障害など」

治療法は上記の各ステージによって異なります。たとえば「顎の痛み・開口障害など」は、苦痛や不自由を解消するために対症療法として投薬やストレッチのような運動療法が有効です。原因除去療法としては、自律訓練法などの心理療法が中心になります。いずれにしても、その病因からしても、歯や噛み合わせを触ることは原則としてありません。

ちなみに「咬合」が原因で起きるTMDもまったく無いわけではありません。それは詰め物や被せ物、または入れ歯を装着した際に、明らかに噛み合わせが高いような場合や、歯列矯正によって噛み合わせが 以前と大きく変わってしまったりすると、顎を動かす咀嚼筋がその変化に順応できず、一次的にTMDの症状が出る場合があります。

このように歯科医が作った「噛み合わせの変化」によって起きるTMDは、TMD罹患数全体からすると微々たるものです。ですから、簡単に「顎関節症」といわれて安易に健康な歯を触られるのだけは注意してください。