| 治療と機能回復の関係は? |
歯に詰め物をしたり、被せたりすることを「歯の治療」と思っていませんか
❑眼科の治療とメガネの関係
❑病気の治療と機能回復処置
❑機能回復が目的?
歯科の治療の理解を深めるために、ここでは視点を変えて、「眼科の治療」と「メガネ」の関係を取り上げてみましょう。
たとえばあなたが、目に痛みや腫れ、または見えにくいような異常を感じて、眼科を受診したとします。眼科の医者は診察して診断を下し、あなたの同意の上で必要な治療をします。その結果、目の病気は治りましたが、残念ながら視力が少々落ちてしまったと仮定します。
医者から「目の病気は治ったけれど視力が落ちたようだから、日常生活で不自由を感じるようだったら、メガネなどで視力の矯正をして下さい」と告げられました。あなたは医者の勧めで、メガネ店でメガネを新調することになりました。
その場合、メガネをかけることは病気の治療ではありません。メガネは機能回復のために仕方なく使用するものです。メガネをかけること自体、生体にとっては不自然な行為であり、けっこう邪魔なものです。
このたとえが、そっくり歯科の治療に当てはまるのです。
口の中に入る異物、たとえばコンポジットレジンや金属類のつめ物、金属冠やメタルボンド冠などの被せ物、入れ歯やインプラント義歯などは、すべてメガネと同じ性格、つまり機能回復の手段であり、生体にとっては異物以外の何物でもないということです。
治療する前からメガネを勧める眼科医は聞いたことがありませんし、眼科医も患者も、できればメガネをかけなくても済むような治療結果を期待するはずです。それが医療なのです。目の病気の治療前に、メガネの種類や材質や作り方を説明するのが無意味なように、歯の治療も同じなのです。
歯や歯茎の病気が治癒してから、必要があれば、それから機能回復を考えればいいのです。それが「治療」と「機能回復」との正しい関係です。ですから、病気の治療の前に、詰め物や被せ物の種類を決めたり、補綴物の費用の見積もり出すことなどは、医療行為をする者からすれば、異常なことになります。
繰り返しますが、どんなに高価な物でも歯や口の中に異物を入れる行為は、厳密にいえば治療行為ではなくて、機能回復(噛みにくい、発音しにくい、見た目が悪いなどの改善)の手段だということです。
確かに機能回復は必要ですし、歯の治療とは切っても切れない関係なのも理解できますが、だからと言って「機能回復」が最終目的ではありません。歯科の医療としての目的は、歯や口腔の健康の回復です。そして最終目標は、機能回復した後の健康を生涯に亘って維持管理することです。
仕方なく行う機能回復の「手段」を、歯の病気の「治療」と勘違いしていては、口の中は不自然になるばかりで、いつまでたっても口の中の病気は治らないということになってしまいます。
患者さんは、当然、病気の治療をしてから詰め物や被せ物をしてもらっていると思っていることでしょう。ところが、ほとんどの歯科医の興味は「病気の治療」ではなくて、「口の中の大工仕事」なのです。それはなぜかと言えば、歯科医は「医者」ではないからということに尽きるのです。
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