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インプラント

歯科用インプラントの実態
❑インプラントを勧められて悩んでいます
❑歯科医がインプラントを勧める理由
「インプラントは最新の治療法で、成功率が高い」のウソ
入れ歯に比べよく噛める」のウソ
「両隣の歯を傷つけないので生体に優しい」のウソ
インプラントの医学的な評価
アドバイス

インプラントを勧められて悩んでいます

数年前にニューヨーク市在住の友人(患者)から、緊急のメールが届いたことがありました。その友人は、当医院での歯科治療途中に急遽海外赴任することになり、仮歯のまま4年が経過していました。メールには、その仮歯が取れて近所の歯科医院に行った時の友人の戸惑いがつづられていました。というのは、その歯を抜いてインプラントにすることが最善の治療だと歯科医から言われたというのです。
 
早速、わたしは友人の資料を引っ張り出し、メールで送られてきたレントゲン写真を見比べて驚きました。問題の歯は健全な歯質が残っていて、治療しだいでは十分に残せる可能性がある歯だったのです。ところが米国のその歯科医は、その歯を保存するための治療を放棄して、インプラントを埋め込むというのですから。

メールの返信には、帰国する予定が立たなければ、現地で応急処置(仮歯を作ってもらうこと)が必要であることと、心配なら他の歯科医のセカンドオピニオンを聞くことを伝えました。友人はすぐに職場の同僚の紹介で、新たに2件の歯科医院を受診したのですが、いずれもインプラントを勧められたそうです。
 
さて、日本でも、わたしの友人の場合と似たような経験をお持ちの方が少なくありません。ちなみに、インプラントを勧める歯科医は、その利点を概ね次のように説明することが多いようです。

1.最新の治療法で成功率が高い。
2.入れ歯に比べよく噛める。
3.両隣の歯を傷つけないので生体に優しい。


これらがもしも本当なら、インプラントの出現は、歯の悩みを抱えている患者さんにとっては朗報であり、現在、斜陽の歯科業界にとっては、まさに救世主となることでしょう。

でも、ちょっと待ってください。よく効く薬にも副作用があるように、物事の本質を見極めようと思ったら、一度立ち止まって、功罪の両面を確認する慎重さが必要です。

インプラントについて、まずは知っておきたいことがあります。それは、インプラントは入れ歯の1種であることです。つまり、「インプラント治療」とは「インプラントと呼ばれる入れ歯を入れること」になります。「入れ歯」を入れることは機能回復の手段であって、「メガネ」や「かつら」を装着することと変わりません。だから「治療」とは無縁の行為なのです。
その起源は古く、大昔から存在していましたから、インプラントはちっとも新しい「入れ歯」ではありません。強いていえば、骨と結合するタイプが開発され、初期の脱落が減ったことと、歯科医師数の増加や低い保険点数の影響などで、厳しくなった医院経営の打開策として、歯科医が飛びついたという経緯があります。

保険診療適応外であるインプラントは、自費であり、それもかなり高価な入れ歯なのです。インプラント本体の単価は1本2万円前後ですから、埋め込み手術だけで数十万円もすること考えると、商売としては旨みのある商品といえるでしょう。

また「成功率」というのもくせ者で、「5年保ったら成功」という科学的には何の根拠もない基準が一人歩きをしています。つまり、仮に5年と1日でインプラントが脱落しても、それは成功と見なされるのです。

運悪く歯を失ってしまうと、みなさんは咀嚼や発音や見た目などで、苦痛や不自由を感ずることになります。そのような機能障害を解決するために必要なのが、欠損補綴(入れ歯、ブリッジ、インプラント)と呼ばれる機能回復の手段です。

では、どの方法がよいのでしょうか。それぞれの方法には利点・欠点があり、それなりの存在理由がありますので、単純に比較したり、歯科医の好みや患者さんの懐具合で決めるようなものではありません。

たとえば、移動手段でも、徒歩から始まり、電車、車、飛行機など、目的に応じて選択するのと同じように、欠損補綴(入れ歯、ブリッジ、インプラント)も、それぞれの利点が最大限に発揮され、かつ異物の害を最小限に抑えられる方法を選択すればよいのです。
いい加減な入れ歯しかできない歯科医にとっては「入れ歯に比べよく噛める」ということになりますが、理にかなった「入れ歯」は、ちゃんと噛めますし生涯使えるものなのです。ですから「入れ歯に比べよく噛める」は、一般論としての「入れ歯」そのものの評価ではないことも知るべきでしょう。
「ブリッジにすると周りの歯を傷つけることになるから、インプラントの方が生体に優しく安全です」とは、インプラントを勧める歯科医の決め台詞であり、患者さんにしてみれば、つい納得してしまいそうな言葉です。実際に、この一言でインプラントを選んだ方も多いのではないでしょうか。

このような考え方はMID(Minimal Intervention dentistry)といって、「最小限度の歯科的侵襲」という意味です。これは特別に新しい考え方ではなくて、医療行為の基本と考えるべきものです。医療行為の結果を出すために、極力、身体に害の少ない方法を選択しなさいということです。

さて、インプラントはどうなのでしょうか。機能回復のために、歯を削る害と、歯肉や歯槽骨を削る害とでは、どちらが生体に優しいと思いますか。さらに、歯の表面に付くブリッジと、歯肉を貫通して骨の中に埋め込まれるインプラントとでは、長期的に見て、どちらが生体に影響が少ないと思いますか。

歯を失わなければ、欠損補綴も不必要です。本当にMIDを考えるなら、歯科医は歯の病気の治療をして歯を保存することを第一にすべきでしょう。

以上のことから、歯科医がインプラントを勧める本当の理由は、面倒で儲けのない治療をするより、簡単で高額な収入が得られるからと思われても仕方がありません。

日本医事新報という医師向けのメジャーな専門雑誌があります。数年前のこの雑誌に、歯科用インプラントの臨床評価が載っていました。それによると、すべてのインプラントは次の3つのカテゴリーに分類されるそうです。

1.失敗インプラント
2.失敗しつつあるインプラント
3.病的インプラント


いかがでしょうか。世界中で行われているインプラントは、必ず、このどれかのカテゴリーに入るということです。つまり口腔内の健康な組織を維持できるインプラントはないということなのです。言い換えれば、歯科用インプラントには「成功」とか「失敗」という概念は通用しないということです。現時点では、医学的な観点から判断すると、長期的にはすべてが「問題あり」ということになりそうです。

「5年持てば成功」はインプラントを勧める歯科医の常套句です。天然の自分の歯でさえ、生涯に亘って健康を維持させることは、ある程度の知識と努力が必要です。それでも、歯肉を貫通して顎の骨の中まで突き立っているインプラントに比べれば、自分の歯は宝です。インプラントは、「メガネ」や「かつら」と同じ性格の、機能回復の手段ですから、治療すれば残せる歯を抜いて、その歯の代わりに入れるようなものではありません。

歯が病気にかかり、たとえ治療が困難でも、治癒する可能性がゼロではない限り、その歯を抜いてインプラントにすることは、治療放棄です。考えてもみて下さい。みなさんご自身の目や手や足の病気で、それの治る見込みがほんの少しでもあったとしたら、みなさんならどうしたいのかを。

手足の病気の治癒率と、義手や義足の成功率とを比較することが無意味なように、むし歯や歯周病の治癒率とインプラントの成功率とを比較することもナンセンスなのです。医者なら病気の治療を最優先にするはずです。結果的に治療が失敗に終わって歯を失ったとしても、機能回復の方法はそれから考えればいいだけのことです。

所詮、インプラントは機能回復のための「入れ歯」です。生体にとっては異物そのものですが、それでも選択したければ自己責任ですので、欠点をよく理解して「仕方なくする」感覚を持つことです。

現在のインプラントは、歯に代わるものでもなければ「入れ歯」に代わるものでもないというのが、わたしの正直な感想です。